takibi connect

北の大地から感動体験を。サッポロビール北海道工場がつなぐ開拓の精神

  • ホーム
  • 北の大地から感動体験を。サッポロビール北海道工場がつなぐ開拓の精神
takibi connect

北の大地から感動体験を。サッポロビール北海道工場がつなぐ開拓の精神

恵庭市事業者の想い

文:髙橋さやか 写真:斉藤玲子
 
北海道といえば、サッポロビール。北海道限定商品のサッポロ クラシックは、北海道の爽やかな空気を彷彿とさせる、爽快な飲みごこちでファンに愛され続けています。
創業の地・北海道で開拓の精神を受け継ぎビールを製造する、サッポロビール北海道工場。工場長の日比野 卓也さんに、サッポロ クラシックが支持される理由と北海道工場の歩みについて、お話をうかがいました。

1985年以来、道民に愛されるサッポロ クラシック

取材当日はからりと気持ちよく晴れたビール日和。工場の外に積まれたパレットの姿にワクワクしてしまいます。

1985年に誕生した北海道限定の「サッポロ クラシック」は、「サッポロ生ビール黒ラベル」や「YEBISU」と並ぶロングセラー商品です。収穫したてのフレッシュなホップを使用した富良野ヴィンテージなど、季節限定、北海道ならではの商品もラインアップ。まずは「サッポロ クラシック」誕生の背景についてうかがいました。
 
ーー私自身「サッポロ クラシック」との出会いから、ビールが大好きになりました。まずはクラシックが開発された背景について教えていただけますか。
 
日比野: 1980年代、ビール業界は「容器戦争」といって、各社が趣向をこらした容器で競争をしていた時代がありました。2リッター容器や卵型の容器など、ユニークな容器が登場したものの、ビール需要全体の拡大には繋がっていきませんでした。そこから本質に立ち返り、品質志向の新商品に各社が舵を切ったのが、1985年のことでした。

北海道工場の見学コースには歴代のビール容器がズラリ。左下には容器戦争時代のものも。
北海道工場の見学コースには歴代のビール容器がズラリ。左下には容器戦争時代のものも。

日比野:時を同じくして起こったのが「一村一品運動」です。“地域活性”や“地域主権”といった文脈から、「地域ごとの特産品を一品ずつ生み出そう」という運動が全国で起こったのです。
こうした流れの中で、 行政を含め地域から「北海道ならではの商品」への期待が高まっていきました。そうして北海道への感謝の気持ちを込めて、1985年6月に誕生したのがサッポロ クラシックです。
 
クラシックは入れ替わりの激しいビール業界で変わらず支持されている、稀有な存在。北海道の方たちに愛されているビールだと感じています。

ーー1985年の発売以来、サッポロ クラシックはどんどんファンが増えている印象があります。缶では13年連続売上アップを達成していますよね。支持される秘訣はどこにあるのでしょうか?
 
日比野: 発売以来、北海道限定販売と道産原料にこだわってきました。品質が高い上富良野産のホップと、北海道産大麦麦芽「きたのほし」を一部使用しています。さらに、こだわりの原材料を生かす醸造法が、ホッホクルツ製法です。ドイツの伝統的な醸造法で、高温短時間仕込により、麦芽100%のまろやかな味わいとスッキリした飲みやすさの両立が叶うのです。
 
クラシックの場合は特に北海道との結びつきが強く、「北海道でしか飲めない」「北海道だから飲める」という限定感も、魅力のひとつ。道民だけでなく、旅行で訪れた道外のお客様からの支持もファンが増えている要因かと思います。
 
新千歳空港に到着すると、まず出迎えてくれるのがサッポロ クラシックの広告。そこから北海道の爽やかな気候と「生ビールが美味しい」というイメージが結びつく。旅行中にクラシックを飲み、「おいしい!」と心に刻まれる。こうした感動体験が、「次に来た時もまた飲みたい」という広がりを生んでいるのかもしれません。
 
ーー北海道限定であることがブランドになっていますよね。
 
日比野:クラシックの味わいは、北海道の気候や料理とマッチしているんですよね。クラシックは甘みがあって口当たりもマイルド。 どんなお料理にもマッチしますし、苦みや渋みの質が違うので、ビールが苦手な方も入りやすいのかなと思います。
北海道工場のスタッフもクラシックに対する思い入れが強く、細かな工程にも気を配りながら味づくりをしています。

ーークラシックならではの味わいを開発するには苦労もあったのでしょうか
 
日比野: そうですね。苦労したと聞いています。
麦芽100パーセントのビールを手がける場合、苦味を効かせたり香りを強くするなど、“本格志向”のビール開発が主流かと思います。そうした中で、クラシックのように麦芽100パーセントながら、口当たりがよく爽快な飲みごこちというのは、他にはない特徴的な商品。絶妙な味わいの発想力によって、独自のポジションを獲得できたのかもしれません。
 
ビールも多様化する中で、クラシックが多くの方に愛されているのは、非常にありがたいことだと思います。1985年の発売から長きにわたって売上を伸ばしてこれたのは、北海道のみなさまがクラシックを飲むたびに、地元の温かさを感じるブランドとして認知してくださったからでしょう。

未曾有の事態でも揺るがず届けた“変わらない味”

北海道民に愛され成長してきたサッポロ クラシック。北海道への感謝を込めたビールが生まれた背景には、サッポロビールと北海道開拓の歴史が深く関係しています。北海道開拓時代にすすめられた農業振興と殖産興業。開拓使は、ビールの原料となる大麦とホップの栽培研究をおこない、1876(明治9)年9月にはサッポロビールの前身となる「開拓使麦酒醸造所」を設立。1881年からは道内産原料100パーセントのビール製造がスタートしました。

現在でも、大麦とホップの両方を育種し、協働契約栽培で調達しているビールメーカーはサッポロビールだけ。創業から100年以上の時を経て、1989(平成元)年にオープンしたのが、現在恵庭市にあるサッポロビール北海道工場です。
 
日比野:北海道工場は主に、北海道エリアへ供給する商品を製造しています。エリア限定のクラシックもその一つです。
 
恵庭に工場を建設した理由の第一は、水質の良さと豊富な水源です。ビールづくりにおいて、水は非常に重要です。いわゆる硬水、軟水がありますが、恵庭には恵庭岳を水源とするビールに適した水が豊富にあるのです。 加えて、交通網の利便性とビールの運搬に適した立地と広い敷地。さらに、恵庭市のみなさまからの熱心な誘致をいただきました。
 
「緑を大切にする開かれた工場」というコンセプトのもと、ビオトープ園やパークゴルフ場なども備え、地元の小学校生が遠足で訪れることもあるんですよ。創業の地である北海道で、地域に根ざした工場として、地域貢献や社会貢献にも力を入れています。

ーー工場が設立されてから来年(2024年)で35年ですが、長い歴史の中で大変だった時期などもあったのでしょうか?
 
日比野: 2018年の9月6日に起こった、北海道胆振東部地震にともなう停電ですね。
ビールの製造工程はすべて自動制御のため、電気が全ての源です。
また、「仕込」と呼ばれる上流の工程が途中で止まってしまうと、全てがダメになってしまいます。停電と仕込のタイミングが重なってしまった商品は、全量使いものにならなくなってしまい、その量は数百万本にもおよびました。
 
せっかく造ったものが停電で使えなくなってしまうのは、非常に心苦しかったですね。
 
電力が復旧した後も各所に気を配らなければ、思いがけないところが作動するため、さまざまな工夫が必要になります。年に一度実施していた防災訓練のおかげで、スムーズに立ち上げることができたのは不幸中の幸いでした。

日比野: 6日に停電が起きてから、全ての製造工程が再開できたのは9月14日のことでした。部分的に立ち上げながらの製造は、大変だったと聞いています。
 
ーー節電までは訓練されていないですものね。
 
日比野: そうですね。瓶なのか樽なのか? 黒ラベルかクラシックか?
どれを優先して動かしていくか、組み合わせの調整も大変だったと思います。
工場は電力を100パーセントに近い状態で使用しています。停電復旧後も節電要請があったため、みんなで知恵を出し合いながら工夫した操業をおこないました。

創業の地でこれからも感動体験を

大部分が機械化されているビール製造ですが、原料である大麦とホップの品質は毎年変わるそう。信頼される味を変わらず届けていくためには、人の五感を生かした管理が大切だと日比野工場長は言います。
 
日比野: ビールは、原料の品質が毎年異なります。原料の変化によって発酵の仕方も変わりますから、品質の変化を最小化するため、醸造の特性を踏まえた工程管理をおこなっています。
 
ーー そうした細かな積み重ねがおいしいビールにつながっているのですね。変わらない味を守り続けていくことの難しさも、あるのではないでしょうか。
 
日比野: そうですね。酵母や発酵管理については技能がまだまだ必要なところです。 工程は自動化・機械化されている部分が多いですが、人間の五感を生かした管理というのは、まだまだ必要であり、変わらない味を守っていく上でのポイントとになるのかなと。
 
日常の生産活動では、品質を高いレベルで保つことが大前提でありながら、工程をつぶさに見ていくと無駄な部分がうかびあがってくることもあります。省エネやロスを減らすためにも、工程を見直しながら製造しているところです。
 
ーー大部分が自動化・機械化されている中で、細かい無駄を見つけていくのは神経を張り巡らせる必要がありそうですね。
 
日比野: そうですね。例えば、5年前から運用している自動の工程を、5年後に別の人の視点で、分析・チェックしていくのは、とても大事なことです。そうすることで、改善のPDCAが回っていきます。我々の言葉で「コンプリートチェック」というのですが、完全なチェックをするには、やはり人間の力が必要。工場のスタッフも真摯に取り組んでくれています。

ーー人の力の大切さを感じました。最後に今後取り組んでいきたいことなど教えてください。
 
日比野: 私たちは「開拓使からのものづくりを磨いていこう」を第一のポリシーとして掲げています。歴史観も含め、脈々と受け継がれてきたものづくりと文化を、しっかりと後世に残していくことを大事にしています。
 
来年(2024年)には、北海道工場も35年目を迎えます。時代にあった手法を取り入れながら、地域貢献や社会貢献も発展的に進め、創業の地である北海道に立つ工場として、全工場をリードするような存在を目指していきたいですね。
 
北海道から新しい未来を創造し、「開拓使からのものづくり」というバトンをつないでいけるよう、みんなで考えながら活動していきたいと思っています。
 
長年愛されるビールの裏側には、ものづくりへの真摯な姿勢がありました。サッポロビールはこれからも創業の地、北海道から感動体験を生み出していきます。

【会社情報】
サッポロビール㈱ 北海道工場

〒061-1405
北海道恵庭市戸磯542-1
電話番号:0123-32-5802
  • このエントリーをはてなブックマークに追加