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恵庭市

捨てられるエゾシカをゼロに。Ezo Momijiが貫く「命を使い切る」使命

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捨てられるエゾシカをゼロに。Ezo Momijiが貫く「命を使い切る」使命

恵庭市事業者の想い

文:本間 幸乃  写真:斉藤 玲子
 
一撃で、仕留める。
それは獲物を苦しませないため。そして、最高品質の肉を提供するため。
 
捨てられる命をゼロにしたいーーそんな思いから、北海道恵庭市でエゾシカ肉の加工販売を手がける、Ezo Momiji(エゾモミジ)を立ち上げた村田優斗(まさと)さん。自らもハンターとして狩猟から加工、販売まで一貫して担っています。「一頭の命と向き合い続けてきた」という、これまでの歩みと事業への想いをうかがいました。

魅せられた世界で知った狩猟の現実

子どもの頃からアウトドアに親しんできたという村田さん。“野生の本能に駆り立てられて”23歳から狩猟の世界に足を踏み入れたといいます。
北海道では農林業への被害や交通事故など、人間社会にさまざまな影響を及ぼし有害獣とされるエゾシカ。駆除の現場で村田さんが目の当たりにしたのは、悲しい現実でした。
 
村田:最初はただの趣味で狩猟していたんですが、狩猟免許の取得後、恵庭市猟友会に所属したんです。そこで知ったのは、「害獣駆除」として処理された恵庭のエゾシカが、9割以上捨てられている現実でした。山に穴を掘って、鹿を投げ捨てる。周囲に広がる臭気問題やクマによる被害も懸念されていました。

ーーそこからどうしてEzo Momijiを創業することになったのでしょう。
 
村田:現実を目の当たりにしてショックが大きかったし、「なんで?」って思いましたね。使えるのに捨てている。ジビエの美味しさを知っていたからこそ、「もったいない」という気持ちも強くありました。
捨てられる鹿の命を活用しなければと、使命感を抱くようになったんです。
 
市や猟友会からは、「エゾシカの処理施設が必要だ」という声が上がっていましたし、僕自身、狩猟する時は食料として捕獲していたんです。先輩ハンターが隣の北広島市で食肉加工施設を経営していたこともあって、「恵庭でもできるんじゃないか」と考えました。
 
 
ーー趣味で狩猟・加工していたとはいえ、施設を建てるとなると大きな資金も労力も必要ですよね。
 
村田: そうですね。結構大変でした。補助金は一切使わず、全部銀行の融資でまかなって。頑張りましたね。

技術を磨き、最高品質のジビエを届ける

「捨てられる命を活かしたい」と、2024年にEzo Momijiを創業した村田さんですが、事業はゼロからのスタート。事業を軌道に乗せ、高品質なジビエを届けるため、技術を磨き販路の拡大を進めていきました。
 
ーー狩猟で大切にしていることはありますか?
 
村田:鹿をなるべく苦しませないこと。ジビエの質は狩猟で決まりますから、撃つ前から狙いを定めて、仕留める時は一撃で。100m以上離れた場所から、直径わずか5cmほどの頚椎を狙います。撃ちどころと血抜きが肉としての品質を左右するので、一撃で落とした後は、スピーディーな血抜きが鍵です。

仕留めたエゾシカは、狩猟場から工場まで車で約15分という立地を活かし、鮮度を保ったまま加工処理されます。
 
ーー加工でのこだわりはありますか?
 
村田:アルコールを使った急速冷凍です。真空パックした肉をマイナス30度のアルコールに漬けて、一気に芯まで凍らせる。それによって、肉の旨みや栄養をギュッと閉じ込められるんです。
美味しさはもちろん、安心安全にも気を配っています。異物混入が起こらないよう、金属探知機は創業時から導入しています。
 
ーー創業から2年ほどですが、苦労もあったのでは。
 
村田: 最初は販路に苦戦しました。鹿は獲れるけど売場がない状態が半年ほど続きました。「せっかく質の良い肉があるのに・・」と、もどかしさを感じましたね。
 
そんな中、知り合いのツテで、札幌のフレンチレストラン「Amoir(アモワール)」の宮越シェフと出会ったんです。肉の品質は認めてもらえたものの、加工処理の未熟さに指摘を受けて。捌き方やカット方法を指導いただき、最終的にはお墨付きをいただくまでになりました。
 
「Amoir(アモワール)」をきっかけに販路が広がり、ミシュラン獲得店でも使っていただけるように。最近ではSNS経由で販売に繋がることもあります。

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2025年には年間1,000頭のエゾシカをジビエとして届け、現在は10名のハンターと、加工処理のスタッフを抱えるほどに急成長したEzo Momiji。需要の高まりを実感する中、2026年7月には北海道が定めた厳しい衛生管理基準を満たす「エゾシカ肉処理施設認証」を取得し、より安全なジビエを届けられる体制を確立しました。
 
 
ーー仕事で喜びを感じる瞬間はありますか?
 
村田: お客様から喜びの声をいただくと嬉しいですよね。間違いない肉だったんだなって。専属のハンターにも伝えられますし、反応をもとに新たな商品づくりもできる。小規模で、狩猟から販売までを一手に引き受けているからこその強みですね。

日本一のジビエで、命あるものへの敬意を伝えたい

真摯に命と向き合う姿勢、品質への徹底したこだわり。その熱が伝播し着実にファンを増やしているEzo Momiji。事業が成長しても、一頭一頭のエゾシカと向き合う村田さんの姿勢は変わりません。
 
ーーエゾシカの狩猟は「害獣駆除」のイメージが強かったのですが、村田さんは一個人として鹿と向き合っていると感じました。
 
村田: 農業被害だけだったら、正直どこを撃ってもいいんですよ。ただ僕はそういう捕獲はしません。
野生で自由に暮らしている動物には、何の罪もない。農場を荒らすのも、鹿からすると「生きるために食べているだけ」なんです。
 
命をいただくからには、一頭一頭と向き合う。理念として掲げている「命と食」に込めた想いです。

(写真提供:Ezo Momiji)
(写真提供:Ezo Momiji)

ーー最後に、Ezo Momijiで叶えたい夢を教えてください。
 
村田: 日本一のジビエですね。「北海道ジビエと言えば、Ezo Momiji」と言われるぐらいに。人との繋がりを大切に、勢いを止めずに突き進みたいですね。
 
これまで活用できなかった部位をペットフードにするなど、商品開発も進めています。若さを武器に柔軟な発想で、アンテナを張りつつ事業を進化させていきます。
 
捨てられるエゾシカをゼロにするのが、僕らのゴール。
 
全部使い切ることは、命を大切に扱うこと。
これからも命への感謝と敬意を伝え続けていきたいですね。

食べて終わりではなく、命への感謝と敬意を忘れない。
 
毎年必ず、山にあるエゾシカの慰霊碑にお参りに行くという村田さん。まっすぐに目をみて話す姿に、何事にも真剣に向き合う姿勢が滲み出ていました。
 
命を繋ぎ、食の感動を届けていく。Ezo Momijiの道のりは始まったばかりです。

Information

株式会社Ezo Momiji
〒061-1409
北海道恵庭市黄金南1丁目26-19

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