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深く掘り下げられるのが専門店の面白さ トモヱベーグルが豊かにする日々の食卓

恵庭市事業者の想い

文:高橋さやか 写真:斉藤玲子

ひと口ほおばると、パリッとした皮の食感。モチモチした歯応えに、小麦と酵母のやさしい風味。おいしさに加え、1つでお腹いっぱいになるボリュームがトモヱベーグルのうれしいところです。
トモヱベーグルを営む角井さんは、お母さん、お兄さんも独自にベーグル店を経営するというユニークなご家族。自身をパン職人ではなく「研究者」と語る角井さんが、生まれ故郷の埼玉をはなれ、恵庭でつくる「世界でここだけのトモヱベーグル」について、お話をききました。

埼玉、アメリカ、カナダ、そして恵庭へ

ーー恵庭でベーグル専門店をやろうと思ったきっかけはなんだったのでしょう?
小麦の産地である江別が近いからなのかな?と思ったのですが。


角井:もともとは、埼玉県さいたま市出身なんです。高校を卒業して、ちょっと嘘みたいな話なんですけど、アメリカのニューヨーク州立大学に行ったんですね。そこに2年いて、そのあと、カナダのブリティッシュコロンビア大学へ。先住民族の研究で有名な大学で、考古学を専攻していました。

その後、就職は日本でしようということで帰国して。留学生を対象にした就職セミナーで、びっくりドンキーを運営するアレフに出会ったんです。留学生枠で入社して、しばらくは、埼玉県内のびっくりドンキー何店舗かで働いて。

ちょうど、2年目ぐらいで恵庭にえこりん村※をつくるということで、運営企画の部門へ異動になりました。えこりん村をオープンするにあたって、ガーデンデザイナーなどがイギリスから来ていたので、その対応も含めてでしたね。

※えこりん村は、全国にハンバーグレストラン「びっくりドンキー」 を展開する株式会社アレフが運営するエコロジーテーマガーデン。約1000種類の植物を植栽する10haの庭園の他、羊やアルパカを放牧展示する牧場を併設。地場産の食材を使用するレストランもあります。

角井:異動にともなって恵庭に住んでみたら、空気と水がおいしくて。一番最初、びっくりしたのは水道水のおいしさ。子どもを育てるのに自然環境も恵まれてますし、新千歳空港や札幌へのアクセスも良い。コンパクトで住みやすいですよね。
恵庭という街がいい街だったので、ここでお店をやろうと2017年4月にオープンしました。

たどり着いたのは母のベーグル

えこりん村でマーケティングに携わった経験から、自分で商売をしてみたいという気持ちが芽生えた角井さん。最初から、ベーグル専門店を目指していたわけではありませんでした。

ーーご自身で商売をしていこうと思ってから、お店をオープンするまでに修行とかはされたのでしょうか?


角井:まずは、運営や経営に近い仕事をしたいなと思って今から5〜6年くらい前にアレフをやめて、大丸百貨店のレストランを運営している会社に入りました。店長などを経験して、その後、経営ってどんな感じかなと、社長と自分しかいないような建築のベンチャーでも働きました。

角井:ベーグルって決めたのは、自分で会社をやろうと思ったあとですね。

最初は、東松山市のやきとりの店をやろうかなと思っていたんです。東松山市のやきとりって、鳥じゃなくて豚のカシラ肉を炭火でじっくり焼いて、辛味の効いたみそだれをつけて食べるものなんですけど。こっちでやったらウケるんじゃないかなと。

そういう話をしに、一度実家に帰ったんですよね。母と兄はベーグルのお店をやっていて、当時は弟も居酒屋をやってたので、自分でお店をやるってどんな感じなのと。

何をやろうかと相談する中で、母のベーグルは北海道産の小麦を使っていて、おいしくて。せっかく北海道でやるなら、それを広めるっていうのをやってみたいなと。

そこから、母のもとで修行しました。合間に、東京の老舗のベーグル店やパン屋さんなどを食べ歩いてリサーチして。その経験はいまも活きてますね。

じつは最初、ベーグルが好きじゃなかったという角井さん。お母さんのもとでのベーグル修行ののち、角井さんはより「うまい」オリジナルのベーグルを追求していきます。
ーートモヱベーグルの特徴ってどんなところでしょう?


角井:食感と、小麦粉、酵母の風味ですかね。トモヱベーグルのベーグルは、母が経営する「小春日和」のベーグルを自分好みにアレンジしたものです。

僕が考えた「うまいベーグル」の要素は、「固すぎず、しっかりとした噛み応えの香ばしい皮」「しっとり、モッチリとした内側の生地」「小麦と酵母の自然な甘さと風味」の3つ。

そして、うまいベーグルをつくる上で鍵となるのが「独自ブレンドの小麦と天然酵母」「オリジナルの成型方法」「伝統的なベーグルの製法」です。

小麦は、味と香りの良いキタノカオリ、しっとりモチモチ食感を作るハルエゾ、2つの小麦のコントローラー的な役割のフユエゾ、の3つをブレンドしています。

天然酵母のパンは、発酵が不安定なので、湿度と気温によって水分量の調整が必要なんです。小麦粉もその年によって仕上がりが変わってきます。

伝統的なベーグルの製法って、ゆでてから焼くんですけど、ゆで加減や焼き時間も状況に合わせて、品質を保てるように微調整しています。深く掘り下げられるのは専門店の良いところですね。

パンも生きものなので、微調整しつつですが、社員の方と交代でできるよう、ちゃんとマニュアル化して。そこは、びっくりドンキーでの経験が生きてます。

手間のかかるベーグルは、商売としてはむずかしい

ベーグルを探究し、世界でココだけのオリジナルベーグルにたどりついた角井さん。ですが、お店をオープンしてから順風満帆というわけではありませんでした。

角井:オープンしてから2年くらい、軌道に乗るまでは経済的に厳しかったですね。
うちのベーグルって、手作業で一つずつオーガニックシュガーを溶かした鍋で茹でてから、順番にオーブンで焼いているんです。その工程が噛みごたえのある皮と、モチっとした食感の鍵になるんですけど。普通のパンより手間がかかるんですよね。

かといって、効率によりすぎて、大量生産しようとすると、おいしさが落ちてしまう。だから、ベーグルってビジネスとしては成立しにくい。はじめて半年、一年やってみた時に、なかなか豊かな感じの商売にはなりづらいなと感じましたね。品質とサービスを保ちながら、収益構造をつくっていくというのはずっと課題です。

ただ、商売自体はつねに楽しいですね。なにかやりたいと思ったことをすぐできますし、自分が全てプロデュースした商品で、お客さんに喜んでもらえる。これ以上うれしいことはないですね。

ーーお店が軌道に乗ったのは何かきっけがあったんでしょうか?

角井:商売って常に何らかの形で、お客さんとコミュニケーションをとり続けていくことだと思うんですよね。まだきたことがない人には、広告や発信で知ってもらう。きてくれた人には良いサービスや、次のきっかけになるものを。そういうのが商売の基本ですよね。アレフでも販促にたずさわっていたので、コミュニケーションの大切さというのを経験していました。
お客さんとのコミュニケーションを積み重ねていくことで、経営的に落ち着く時期っていうのがくるんじゃないかなと思うんですよね。軌道に乗るまでに、なにか大きなきっかけがあったわけじゃない。近隣の方がどれだけ足繁く通ってくれるかがこういう商売は大事だなと感じています。

日々の食卓にベーグルを

丁寧な商品づくりとお客様へのコミュニケーションの積み重ねで、すこしずつ軌道にのってきたトモヱベーグル。現在は、2店舗目となるトモヱベーグル サンドウィッチラボ を構えるほどになりました。

ーー角井さんの今後の夢や目標はなんでしょう?


角井:ベーグルをできるだけ多くの人に届けて、日々の食事の中にとりこんでもらえるとうれしいですね。自分でベーグルを作れる人も増えてくれるといいなと思っていて、去年はベーグル教室もやってたんです。

トモヱベーグルは、三巴という会社なんですけど、ゆくゆくはまちづくりをしたいと思ってるんです。小さなまちに個性的なお店がいっぱいできて、住んでる人が心地よく楽しく暮らせるまち。東京の逃げ道としての地方じゃなく、「このまちがいい町だから」と住んでもらえるようなモデルを作りたいなと思っていて。

その第一歩がトモヱベーグルなんです。まずは、個性的なお店をつくって軌道に乗せるところから取り組んでいます。実店舗とネット販売と、商売を長続きさせられるような仕組みをつくって、続けていきたいですね。

明るすぎない照明に落ち着いたインテリア。家の近くにこんなお店があったら、毎日通いたいと思いながら、お話をうかがいました。アメリカのちょっとドライな雰囲気を意識したというトモヱベーグルの店内は、角井さん曰く「ただベーグルを買いに来るだけじゃなく、喫茶店よりはライトに、気軽に。お客さんがパソコン開いて仕事したり、勉強できるような空間」を意識したそう。インタビュー中も、ベーグルをもとめてくるお客様の姿がありました。角井さんのこだわりがつまったベーグルのファンは、着実に増えています。

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