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ひと口目で感動の味を ジェラテリアジジの飽くなき探求

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ひと口目で感動の味を ジェラテリアジジの飽くなき探求

恵庭市事業者の想い

文:髙橋さやか 写真:斉藤玲子

「イタリアで味わった感動を恵庭で届けたい」ーー熱い想いをこめて、ひんやり冷たいジェラートをつくり続けるジェラテリアジジ。日本ではここだけという放牧認証を受けたジェラート店です。放牧畜産実践牧場として認証された水本牧場の生乳を使い、素材からお店づくりにいたるまで「そのままのイタリア」にこだわっています。その味は、本場イタリアからの旅行客も訪れるほど本格派。たくさんの人に「非日常のジェラート体験」を届けています。ジェラテリアジジで、統括マネージャーをつとめる太田 裕也さんにお話をうかがいました。

水本牧場がささえる本場イタリアの味

真っ青な空に映える黄色い壁。となりに佇む白い建物と、鮮やかに咲きほこる花々のコントラストに、陽気なイタリアの空気がただよいます。思わず「ここが恵庭?」とつぶやいてしまう一角で、ジェラテリアジジは、本場イタリアの味と心を大切に、素材を活かしたジェラートづくりに挑んでいます。まずは、おいしさの鍵となる水本牧場の放牧乳についてたずねました。

ーー水本牧場とはどういった経緯で出会ったのですか?

太田
:水本さんとの出会いは偶然で、たまたま近いところにいらっしゃったんです。

ーーそうなんですね。ジェラートに謳われている放牧認証とはどういうものなんでしょう?

太田
:ジジのジェラートは、放牧酪農乳製品生産基準と放牧乳製品生産の認定をとっています。これは、「アイスクリームの原材料に、放牧畜産実践牧場として認証された牧場で飼養管理されている乳牛の生乳を 100%使用しなければいけない」という厳しい基準なんです。水本牧場は、この放牧畜産実践牧場として認証された牧場。飼料や飼育方法などの基準があり、水本さんも最初は苦労されたそうです。
放牧認証を受けた牧場から生乳を仕入れ、お店で殺菌してジェラートに加工しているのは、全国でうちだけです。(※2021/07 現在)

ーーそういった厳しい基準がある中で、放牧にこだわるのはなぜなんでしょう?

太田
:イタリアのジェラートが放牧乳だから。とにかく現地と同じこと、「まるごとイタリア」をやるということを徹底してるんです。

水本さんの牧場では広大な牧草地に、牛たちがのびのびと完全放牧で育てられています。飼料も自然のままの牧草。季節の移り変わりとともに、乳脂肪分も変化します。牛には人間のわがままが通じない。だからこそ、ダイレクトに牛の自然体の味をジェラートで表現できるよう、日々探求していますね。
自社の牧場で放牧している牛から絞ったアイスクリームは、全国にたくさんあります。水本さんとうちのように、お互いのいいところをとって・・というのはなかなか難しいこと。放牧乳でジェラートをつくれることになったのは奇跡に近いですね。

恵庭で表現するイタリアという非日常

水本牧場との奇跡的な出会いに後押しされ、ジェラートづくりをつづけるジジ。まるごとイタリアにこだわりつづけるこれまでの歩みをひもときます。

ーーお店がオープンしてからこれまでの歩みを教えてください。

太田
:ジェラテリアジジは、2008年にオープンしました。前身として2004年にスタートしたのが、隣にあるチェルボというイタリアンのお店です。チェルボから湧き出た源泉からジジが生まれました。乳のコク、甘さ、フルーツのフレッシュな味わいや食感など、本場イタリアの味を再現すべくこだわっている、マニアックなアイス屋さんです。

太田:お店がオープンした頃は、ちょうどアイスブームで。お店のつくりもイタリアの街のカフェ的なイメージでした。そこから13年、その時々のニーズに応じて変化してきました。壁の色ひとつにもこだわってるんですよ。今は黄色ですが、以前はピンクだったんです。それもイタリアの港町の雰囲気に合わせて。ここに一歩踏み入れたら、旅行気分でイタリアを感じてもらえたらと、試行錯誤しています。

オープン当時のジジ。人々の目を引くピンク色の壁が印象的だ。
オープン当時のジジ。人々の目を引くピンク色の壁が印象的だ。

ーーイタリアの味を再現する場所が、どうして恵庭だったんでしょう?

太田
:代表が恵庭出身なんです。彼がイタリアに留学したとき、最初に働いたのが家族経営のトラットリアでした。いわゆるイタリア・マンマのレシピのお店。土地の味、家庭の味を大切にする料理の姿勢にふれ、感動したんです。
その感動を自分が生まれ育った恵庭でも感じてもらいたい。そこから、北海道のブランドを確立していきたいという想いからスタートしました。

僕たちが目指すイタリア料理は、地産地消がベース。ここ恵庭は同じように、地産地消が叶います。水本牧場さんから届く朝しぼりたての放牧乳。恵庭の農家さんが育てた新鮮な野菜。フルーツは季節のものを朝いちで。だから、間違いなくおいしい。いい材料が揃うからこそ、素材の持ち味を生かしたジェラートをつくって、地域のおいしいものを広めていきたいですね。

ジェラートのラインナップは、50種類。その中から日替わりで12種類がショーケースに並ぶ。
ジェラートのラインナップは、50種類。その中から日替わりで12種類がショーケースに並ぶ。

理想の味への探求はつづく

オープン以来、とことんイタリアの味を追求し続けるジジのジェラート。理想の味ができるまでの試行錯誤についてうかがうと、太田さんから返ってきたのは意外な言葉でした。

ーーこの13年の間に、理想の味ができるまでさまざまな苦労があったと思うのですが?

太田
:いや、理想の味はまだできてないですね。結局、イタリアそのものを表現したくても、気候も風土もちがうので、まったく同じものはできないんです。たとえば、牛乳ひとつとっても、牧草を食べて放牧でといっても、土が違えば牧草にも微妙な差がありますし、牛乳の味も違ってきます。

でも、芯になるものは同じ。地産地消の精神であったり。イタリア人って「料理の最後に情熱をひとさじいれる」んですよね。そういったことを大切にしています。
去年と今年は実施できてないんですけど、毎年イタリアに研修へいってました。2〜3週間くらいナポリの下町でアパートを借りて。現地のレストランに足を運んだり、マンマに色々教えてもらってましたね。

太田:そうして自分たちの中にもイタリアを染み込ませながら、「より近づけていくためには?」を常に考えています。たとえば、イタリアだと牛乳はどう運んでるの? フルーツはナイフで切るの? お砂糖はグラニュー糖なの? 塩は日本の塩でいいの?・・そういった微妙なさじ加減を追求していくとキリがないですね。

どんどん研ぎ澄まされていってはいますが、放牧乳イコール自然を相手にしているので、明日はもっと良くなるかもしれないし、悪くなるかもしれない。毎朝レシピの計算からはじめて、ジェラートをつくり続けています。全然甘いもんじゃないですね。笑

ーーゴールがない中で、今日の商品を提供しなきゃいけないわけですよね。
そこのジャッジはどうされているんですか?

太田
:基準はもうけているので、そこを越えるか越えないか。自分たちが満足いってないものは、お客さんに出せないので、出さない時は出さないです。
牛乳は絶対いいんで。与えられたものを活かせるかどうかは、僕らの力次第。
夏は1日800人くらいのお客様が来ていただきますが、冬は1日10組くらいの日もあります。波がある中で、コンスタントに提供できるか。それぞれ悩みはありますね。

ーー日々、悩みや失敗がある中でどう乗り越えていくんですか?

太田
:失敗し続けますね。絶対成功したいので、やり続けます。
新しい商品をつくるときは、できる限りの方法を試します。今回、ピスタチオがすごく美味しくできたんですけど。まず、ピスタチオを各地から取り寄せて、ローストの方法も研究して。責任は重いんですけど、本当にいいところにいくまで、やりつづけます。苦労は背負ってる。だからこそ、「自信を持っておいしいものを届けたい」という強い気持ちがあります。

試行錯誤の末、すごく美味しくできたというピスタチオのジェラート。ジェラートマシンもこだわりのイタリア製。「扱いにくさもあるけど、そこがまたいいんでしょうね」と太田さん。
試行錯誤の末、すごく美味しくできたというピスタチオのジェラート。ジェラートマシンもこだわりのイタリア製。「扱いにくさもあるけど、そこがまたいいんでしょうね」と太田さん。

ジェラートの新しい可能性を探りたい

太田さんの言葉ひとつひとつから、感じられるジェラートづくりへの強い信念。日々探求の中で描く、これからのジジについて聞いてみました。

ーー今後の夢や目標はありますか?

太田
:実はいま、「飲むジェラート」を開発中なんです。8月に恵庭駅の中にオープン予定で準備をすすめています。
グラニータといって、日本でいうとシェイクのようなイメージ。牛乳やフルーツなどをベースにフローズンマシンでつくります。ジェラートに比べると、シャリシャリとした粒状の食感を楽しむことができるんですよ。僕も現地で飲んだんですけど、暑いときには最高なんですよね。イタリアの日常の形として、よりローカルな表現へのチャレンジですね。ジェラートの新しい形として恵庭から広まっていくといいなと思います。

僕自身は、お店の良さを伝えるための仕事がメインなので、これからも「ジジはちょっと特別」をさまざまな形で伝えていきたいですね。

「アイスなんてコンビニでも買えるのに、わざわざジェラートを求めて来てもらえるなんてこんなうれしいことはない」という太田さんの言葉が印象的でした。ジジのジェラートを特別なものにしているのは、きっと太田さんのように創業者と同じ熱量をもち、日々探求し続けるスタッフの存在があるから。取材後に、その想いを噛み締めながらいただいたジェラートの味は格別でした。
一切作り置きはせず、注文が入ってからつくられるジジのジェラート。牧場で放牧の生乳をしぼってからわずか3日ほどで、ジェラートとなって手元に届きます。熱い思いを込めてひとつひとつ大切につくり続ける、「ひと口目の感動」をぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

店舗情報



〒061-1409
北海道恵庭市黄金南2丁目19-8
電話 0123-21-9915
営業時間 11:00 ~ 17:30 (土日祝日は18:00)
※ただしジェラートがなくなり次第終了
※新型コロナウイルス感染症の予防対策により短縮営業の場合もあり
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