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カムイワッカをお守りに。ジャパンミネラルが届ける羊蹄の麗しき水

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カムイワッカをお守りに。ジャパンミネラルが届ける羊蹄の麗しき水

真狩村事業者の想い

文:本間幸乃 写真:斉藤玲子
 
豊かな水資源に恵まれている北海道。中でも「蝦夷(えぞ)富士」と呼ばれる羊蹄山周辺は、国内を代表する名水の産地です。
羊蹄山麓の湧水を原水に、長期保存可能なミネラルウォーター「カムイワッカ麗水」を製造している、株式会社ジャパンミネラル。羊蹄山の恵みを守り届けてきた37年にわたる歴史と、製品への想いをうかがいました。

真狩村の歴史とともに流れる「神の水」を守る

「カムイワッカ」とはアイヌ語で「神の水」。真狩村史によれば、安政5年(1858年)に北海道(蝦夷地)を探査していた松浦武四郎とアイヌ民族によって湧水が発見され、人々の渇きを癒したといいます。
 
歴史ある湧水はどのような経緯で「カムイワッカ麗水」として、製造されるようになったのでしょうか。まずはこれまでの歩みについて、代表の長澤通(とおる)さんにうかがいます。
 
ーー創業された1986年はまだミネラルウォーターが一般的ではなかった時代かと思います。どのようなきっかけで創業されたのでしょう。
 
長澤:ジャパンミネラルは、当時の真狩村長をはじめとした村の有志が立ち上げた会社です。私は10年ほど前に引き継ぎ、4代目にあたります。
 
創業のきっかけは、村の主要作物である大根の規格外品を活用するための構想だったそうです。「羊蹄山の湧き水を使って大根を漬けものにしよう」というアイディアから生まれた「なた割漬け」の製造とともに、「カムイワッカ麗水(以下、麗水)」の製造も始まりました。
 
羊蹄山の恵みから雇用を創出し、村人の安定した生活を願って、ジャパンミネラルは生まれたのです。

雇用創出のため、村の協力のもと始まったジャパンミネラル。創業当時は80名ほどの村人を雇用していたそうです。その後の代替わりを経て、4人目の経営者となったのが長澤さんでした。
 
ーー村の有志によって始まった事業だったのですね。そこからなぜ長澤さんに継承のお話がきたのでしょう?
 
長澤:10年ほど前に、ベンチャー企業の仲間から相談を受けたのです。当時は海外資本による水源周辺での不適正な土地取引が問題視されており、2012年4月に交付された「北海道水資源の保全に関する条例」が記憶に新しい頃でした。
 
当時私は息子の病をきっかけに、故郷の山形でマイナスイオンに関する事業を営んでいました。空気も水も、生きていく上で欠かすことのできないもの。仲間の紹介から真狩村を訪れ、その水の素晴らしさと創業者たちの想いに心が動きました。
 
羊蹄山にはいくつか湧き水スポットがありますが、麗水の源は山の麓から湧き出る水。ミネラル豊富な鉱石によって、長い歳月をかけてろ過された貴重な水であり、先人たちによって守られてきた歴史があります。
 
かつて「神の水」として崇めていたほどの資源の権利が、外国に渡ってしまうかもしれない。それは避けたいと、事業を継ぐ決心をしました。

長澤さんへの取材はオンラインで行いました。
長澤さんへの取材はオンラインで行いました。

価格競争から見出した「備蓄水」という活路

長澤さんがジャパンミネラルの事業を継承した2013年前後は、すでに飲料としてのミネラルウォーターが家庭に普及していた時代。数多の競合がいる業界で経営に苦心しながらも、麗水の価値を信じていたと言います。
 
ーー前任者から事業を受け継いだあとの苦労はどんなところにありましたか?
 
長澤:いくら良い水を持っていても、お客様に飲んでいただかないことには経営は成り立ちません。
麗水の特徴はなんといっても、ミネラルバランスの良さ。私たちの体の約60%は水分でつくられており、ミネラルによって体の機能を調整しています。だからこそ「おいしい」だけでなく、ミネラルバランスの良い水を飲むことが大切なんですよ。
麗水は日常の飲料水としてもご賞味いただきたい品質。炊飯にも、お酒を割るのにも、赤ちゃんのミルクにもオススメです。
 
ただ麗水は保存水として製造を始めたため、工程や容器が特殊な分コストがかかります。一般の飲料水と比べると、どうしても割高になってしまうのです。
 
厳しい水業界の価格競争を生き残るために注力したのが、防災用の備蓄水としての販売でした。
2016年に国内最長保存期間である15年保存水を発売したところ、全国からお引き合いをいただくようになりました。東日本大震災を機に各自治体で企業備蓄に関する条例が定められ「3日分の水と食料の備蓄」が推奨されるようになったことも大きかったですね。

長澤:営業せずにここまでこれたのは、麗水そのものが素晴らしい水であり、その価値を分かってくださるお客様が全国にいたからこそ。
工場の規模を拡大して大量生産に舵を切るのではなく、水の良さを分かってくださる人たちのために、一つひとつ丁寧に届けていくことを軸に事業が安定しました。
 
経営を引き継いで10年経った今は、この水を守り、愛してきた人たちに守られているような気持ちでいます。私の経営手腕というよりは、真狩村の方々をはじめとした周囲からの励ましや、温かいお言葉をいただくことで、苦しい時期を乗り切ることができました。
 
事業に苦心していた頃は、不安な心情を羊蹄山に投影し「山が崩れてきて潰されるのでは・・」と怯えたこともありましたが、今は素晴らしく雄大に見えます。いつも美しい姿で迎えていただいていますよ。

真狩村「ふれあい広場パークゴルフ場」からみた羊蹄山。
真狩村「ふれあい広場パークゴルフ場」からみた羊蹄山。

羊蹄山麓のミネラルを15年保存できる水に

代表・長澤さんのお話をうかがった後日、真狩村にあるジャパンミネラルの工場に足を運びました。
取材当日は、山の緑が眩しいほどの好天。穏やかな笑顔で迎えてくださった工場長・友利勇斗さんに、製品への想いや特徴についてうかがいました。

ーー先ほど初めて「カムイワッカ麗水」をいただきましたが、スッキリとした飲み心地でおいしかったです。
 
友利:ありがとうございます。常温でもおいしいのですが、冷やすとさらにおいしいんですよね。
 
麗水は硬度19mg/ℓのミネラルバランスの良さが特徴です。7.3ph値の弱アルカリ性で、健康や美容に効果が期待できるシリカも43mg/ℓ含まれています。

ーー保存水である麗水の製造工程には、どんな特徴がありますか?
 
友利:どの製品も140℃の熱殺菌を施していることです。この温度は、湧き水のミネラル分を損なわずに殺菌できる、ジャパンミネラル独自の基準です。添加剤を使わず高温で加熱殺菌することで、長期保存を可能にしています。
 
殺菌後は保存期間に応じて、5年80℃、10年81℃、15年82℃の温度で充填します。充填作業は人の手も使うため、温度を上げ過ぎると危険が伴いますし、機械にも過度な負荷がかかります。充填容器と水の双方を殺菌でき、作業可能な温度としてたどり着いたのが、80℃以上という充填温度でした。
 
ペットボトルは高熱充填に対応できる、バリア性の高いものを採用しています。触ってみるとわかりますが、一般のペットボトルより厚みがあって硬いんですよ。容器も長期保存のための大事な要素です。

グッと力を入れても凹まないほどの強度。
グッと力を入れても凹まないほどの強度。
2ℓのラベルは手作業でセット。充填された製品の最終チェックは目視で行っているという。
2ℓのラベルは手作業でセット。充填された製品の最終チェックは目視で行っているという。

友利:工場内には自主検査室があり、原水と充填水の水質検査を定期的に行っています。公的機関による水質分析試験にも年に一度出していますが、これまで安定した水質を維持しています。
 
ーー徹底した衛生管理のもと製造されているのですね。国内最長の保存期間である、15年保存水ができた背景についても教えていただけますか?
 
友利:販売を開始した2016年には、国内には15年保存可能な水がまだなかったと聞いています。当時製造していた5年、10年保存水は他社でも販売されており、市場が飽和状態になっていました。
 
他社との競争に生き残るため「もう少し長い期間の製品を作れないだろうか」と、社内から声があがりました。着目したのが、工場内にあった未開封の製品。当時は製造した水を長期保管していたんです。23年間未開封だった製品を公的検査機関に出したところ、飲料水としての合格基準を満たしていました。
 
パッケージの劣化も考慮に入れ、確実に保存可能な期間として導き出したのが15年。最長期間の保存水が完成しました。

不測の事態でも変わらずある資源を、自分たちの手で

15年保存水が発売された2年後の2018年は、日本各地で大規模な災害が相次いだ年でした。6月9日に発生した大阪北部地震に続き、7月には西日本豪雨、そして9月6日には北海道胆振東部地震が発生。これらの災害を機に、ジャパンミネラルは大きな転換期をむかえました。
 
友利:2018年の災害を機に、注文数が一気に増えました。
当時は充填機が1つしかなく、2ℓと500mlの製品を同じラインで作っていたので「型替え」という作業が必要でした。ボトルのサイズが違うため、形状に合わせて機械をセッティングし直す作業に1時間ほどかかり、作業者の負担になっていたんです。

初代充填機。現在は2ℓ専用として使用されている。
初代充填機。現在は2ℓ専用として使用されている。

友利:この出来事がきっかけとなり、2020年に第二ラインを導入。500ml製品の充填を半自動化することができました。
 
とはいえ、機械の細かい調整は人の手が必要です。第二充填機が入った当初は思ったとおりに機械が動かなくて。ボトルに傷がついたり、動いている最中に異音がしたりと悪戦苦闘しましたね。機械や製品の位置などを微調整し、一つひとつクリアしていきました。
 
天候や気温によっても機械の調子が変わるため、日々調整しながら作業を行っています。

2020年に導入した第二充填機
2020年に導入した第二充填機

ーー日々試行錯誤しながら製造に取り組んでいらっしゃるのですね。友利さんが入社してから「大変だった」と感じた出来事は何かありますか?
 
友利:昨年、水源地からの導水管の引き込み工事を自分たちで行ったんです。
ある時いつも通り充填作業をしていると、水の量が少ないことに気がついて。おそらく地下にある導水管の一部が割れて、水漏れを起こしているのではないかと。
 
創業から30年以上使っていた導水管でしたから、修繕が必要なタイミングだったのだと思います。しかし地下にある導水管を全て掘り起こすとなると、大規模な工事になってしまう。考えた結果、自分たちで新しく200mほどのバイパスを通すことに。製造の合間をぬって作業し、2か月ほどで無事水量を回復することができました。
 
「できることは自分たちの手で」という考えのもと、一人ひとりが柔軟に、責任を持って作業にあたっているからこそ、不測の事態が起こっても製造を続けられているのだと思います。

ーー日々水と向き合っている友利さんにとってのジャパンミネラル、羊蹄山の水とはどんな存在ですか?
 
友利:「大切なもの」という一言に尽きます。私は沖縄県宮古島の生まれなので、余計に水への思いが強いのかもしれません。
 
沖縄の水道水は硬水なので、飲料や料理にはあまり向かないんです。だから煮沸したり、買ってくるのが一般的。夏には雨が降らずに断水することもありました。
海に囲まれているので水は身近な存在でしたが、生活用水は「いつもある」ものではありませんでした。
 
水は「使わせていただいている」という意識を大切に持ち続けたいと思います。山や地球はみんなのものですから。
 
長澤さん、友利さんに共通していたのは羊蹄山への想い。生活を潤すだけでなく、心の支えともなる自然の偉大さを実感した取材でした。
身近な「水」という資源の価値と向き合い続けるジャパンミネラルは、これからも「カムイワッカ」という恵みを守り届けていきます。

会社情報

株式会社ジャパン・ミネラル
〒048-1602
北海道虻田郡真狩村字泉78番地
電話:0136-45-2244
FAX:0136-45-2259

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