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笠井旅館の手作りプリン「さるっぷりん」は恩返しから始まった

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笠井旅館の手作りプリン「さるっぷりん」は恩返しから始まった

猿払村事業者の想い

文:立花実咲 写真:原田啓介

猿払村のお土産として人気の「さるっぷりん」。プリンを作っているのは、実は創業1927年の老舗旅館の女将さんなのです。

「なぜ旅館がプリンを……?」。筆者も、初めはそう思いました。

宿泊施設としての営業に加え、食堂も営んでいる「笠井旅館」さん。猿払取材最終日のランチをいただきながら、「さるっぷりん」誕生のストーリーを女将の笠井里恵さんに、うかがいます。

地域の素材をギュッとつめ込んだ手作りプリン

取材の前に、プリンを出していただきました。猿払産の濃厚な牛乳と、たまごに加え、北海道産のクリームチーズが合わさり、とろりとした舌触りと、くどくない甘さで、あっという間にペロリ。プリンの購入は、笠井旅館とネット、ふるさと納税と村内の「さるふつまるごと館」で可能です。

── どうしてプリン作りを始めたんですか?

笠井:
もともとスイーツを作るのが好きで。食事に来たお客様にデザートとして提供していました。そのうち、宿泊していたお客様に「お土産として持って帰りたい」と言っていただくようになったんです。

猿払っていうと、ホタテのイメージが強いですよね。ただ、お土産として買って帰るにはちょっとハードルが高いと感じる方もいます。

でもプリンだったら手頃だし、猿払にはおいしい牛乳を作っている酪農家さんもいらっしゃるし、平飼いのたまごを作っている方もいます。せっかくお客様に、おいしいと言ってもらえているんだし、お土産になる商品にしようと思い立ちました。

── 味のバリエーションも、たくさんありますよね。

笠井:
そうですね。2014年から作り始めたんですけど、カラメルがベースの味です。他にはヤマブドウとブルーベリー、レモン、オレンジがあります。

── どれも美味しそうです。

笠井:これらに加えて、夏には限定で、ハスカップ味も作ります。レモンとオレンジは国産で、他の素材はぜんぶ猿払産です。せっかく作るなら、できる限り地域のものを使いたくって。

一番人気は定番の味・カラメル
一番人気は定番の味・カラメル

── 他に、味や作る過程でこだわっていることは、ありますか?

笠井:
牛乳とたまごだけのプリンは、他の地域でもおいしいものがたくさんあるので、クリームチーズを入れています。ちょっとレアチーズのような風味がするんです。

手作りしているので施設の許可を得る上で、脂肪分を調整しなければならなくて。そこでオレンジ果汁を、味がわからない程度に、ちょっとだけ入れることにしました。

うちのプリンは一つひとつ手作りで、添加物も入っていません。ゼラチンで固めるタイプや焼きプリンとは違って、個人で衛生面を管理しながらおいしくなる方法を考えて、85度で40分間スチームをかけてじっくり固める方法を選んでいます。たくさんは作れないけど、安心・安全に、お客様に食べていただけるかなって。

ヒントと励ましをくれた常連さんたち

── 宿泊のお客様からアドバイスがあったとはいえ、それをスルーすることもできたと思うんですが、実際にプリン作りをやろうと決めたのは、どうしてなんでしょうか?

笠井:
私たちが継ぐ前、この旅館は叔父夫婦が営んでいました。当時、叔父は村長も務めていて忙しい人だったから、旅館を続けるのがむずかしくなっていきました。でも、手放すのはもったいないということで、私たちがここを継ぐことになったんです。

笠井:主人は猿払出身ですが、村を出てサラリーマンをしていました。私と主人は、東京に住んでいたときに知り合って、結婚してこの旅館を継ぐために、34年前に猿払へ来たんです。でも、旅館なんてやったことがなかったから二人とも右も左もわからない状態でした。

そんな時に一番に支えてくださったのが、常連のお客様だったんですよね。特にイトウ釣りで毎シーズン来られるお客様たち。泊まりに来られるのは春と秋なんですが、皆さん、20年、30年と通ってくださる方々ばかりなんです。

笠井:私は猿払に来る前は主婦だったし、日々試行錯誤だったけれど、常連さんにアドバイスをいただいたり、すごく励まされまたりして。今日お昼に食べていただいたお蕎麦も、主人が打っているんですけど、そば打ちも、常連さんが教えてくださったんですよ。

だから「プリンをお土産に持って帰りたい」っておっしゃったのを聞いて、応えたいって思ったんです。

── お客様に育ててもらったという感覚と言ったらいいんでしょうか。

笠井:
本当にそうですね。常連さんの励ましを受けて、なんとか34年間やってこれたと思います。最近は、その方々も高齢になってきてお電話でのやり取りも増えましたけど、次の世代のお客様も来てくださっています。

笠井:同時に、旅館も老朽化してきて。子どもたちがすぐに旅館を継ぐ予定もないし、施設を新しくするよりは、食べもので恩返ししたいと思うようになりました。建物は古いけど、今までのお客様に感謝を伝えて還元したいなって。

新商品を通じてお客様の声に応えたい

── 「さるっぷりん」は、今や笠井旅館の常連さん以外にも愛されるスイーツになりましたが、今後どんな進化を遂げるのか、何かお考えのアイディアなどはありますか?

笠井:
前々から考えてはいるんですけど、持って帰るのに冷凍のほうが購入しやすい方もいらっしゃるので、そこに対応したいなと思っています。

たまごと牛乳を使って冷凍保存が効くスイーツとなると、「カタラーナ」という、生クリームを使った、プリンよりももっととろっとしたお菓子になるんですよね。でも、カタラーナは他の地域でも作っているから、プリンとタルトを合わせたような、冷凍保存できるものを作りたいと思っています。

── 冷凍できるお土産が欲しいという、お客様からのリクエストがあったんですね。

笠井:
そうですね。商品開発をするときに、専門家の方から製造日以降10日間は大丈夫っていうお墨付きはいただいているんですが、もう少し賞味期限の長いお土産になるといいなと思って。

もう一つは、シフォンケーキを作るのが好きで、宴会のご予約を受けた時にお出ししているんですけど、そのシフォンとイチゴを組み合わせたいなって。今、村のIoT事業で、イチゴの栽培をしているじゃないですか。

── 今年から始まった事業ですね。まだ苗を育てていて、春以降に最初の実ができると聞きました。

笠井:
まだどんなイチゴができるか分からないけど、せっかくだから地域の素材を使って、新しいスイーツを作りたいなって。もう何回か試作はしています。

── 動きが早いですね! 村内の新しい挑戦と重なり合って、また新しい猿払の名産ができるのを楽しみにしています。

取材当日、昼食にうかがうと、ランチは満席。忙しそうにしている女将さんに「大丈夫ですよ」と声をかける村内の方の姿に、常にお客様の声に耳を傾け、真摯に宿や食堂を営んできた女将さんに対する地域の方々の信頼を感じました。

常連さんへの恩返しがきっかけで、猿払の手土産の定番品となった「さるっぷりん」。5種類の味を楽しめるアソートと、一番人気のカラメルのみの詰め合わせ、どちらも大人気です。ちなみに5種類のフレーバーのうち、レモンやオレンジは、常連さんがつないでくださった農家さんのフルーツを使っているのだとか。ぜひ笠井旅館がお客様とはぐくんできた味を、楽しんでみてくださいね。

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