移住者に寄り添い描く“幸せな恵庭移住”への道筋
恵庭市プロジェクト
文:高橋さやか 写真:斉藤玲子 取材協力:トモエベーグル
移住は、単に住む場所を変えることではなく、これから先の生き方を選びなおすこと。だからこそ、移住者を迎えるまちは、暮らしのリアルを誠実に届けられるか、移住を考える人の不安にどこまで伴走できるかが問われます。
移住希望者一人ひとりに寄り添った支援をおこなう北海道恵庭市。 企画振興部 シティプロモーション課の吉田萌美さん、金澤結香さんにお話をうかがいました。
リアルな暮らしのイメージを
恵庭市恵み野にある、トモエベーグルの一角をお借りして取材スタート。恵庭に移住し起業した角井良太さんが営むお店です。落ち着いた雰囲気の店内で、まずは恵庭市の移住施策のなかでも特徴的な「オーダーメイドツアー」について、吉田さんと金澤さんに聞きました。
ーー恵庭市の移住施策のなかで、特に力を入れている取り組みを教えてください。
金澤:「オーダーメイドツアー」ですね。移住相談会で相談して終わりではなく、実際に現地を訪れて、ご自身の目で確かめていただくことが、一番のPRにもなると思っています。満足度も非常に高く、恵庭市としてもイチオシの施策です。
ーーどのようなツアーなのでしょうか。
金澤:貸切タクシーを利用して、職員が移住希望者をご案内しています。市内の公共施設やスーパーなどの商業施設、観光スポットも見ていただきながら、暮らしのイメージを膨らませていただくツアーとなっています。子育て世帯なら子育て支援センターや公園、年輩の方なら高齢者住宅や介護施設、医療機関など、それぞれの希望にあわせて組み立てています。
吉田:数日間滞在する「お試し暮らし」を実施する自治体は多いのですが、恵庭のオーダーメイドツアーは2〜3時間ほどで完結できる手軽さが魅力です。新千歳空港からも近いので、北海道観光のついでに立ち寄っていただくこともできます。
ーーツアーに参加された方からはどのような声がありますか?
金澤:「パンフレットで見るより、実物の方が断然いいね」という声を多くいただきます。「恵庭に移住した後の生活をより具体的にイメージできた」という声も。幹線道路の交通量や自宅前の個別ごみ収集など、恵庭ならではのリアルな生活を見ていただくことも大切にしています。
ーーツアーの中で、何が移住の決め手になるのでしょうか。
金澤:人それぞれだとは思いますが、「ここでなら幸せに暮らせそう」「ここなら自分らしく暮らせそう」と感じた瞬間に心が動くのかな、と私は思っています。
ーー金澤さんがツアーをご案内していて、そう感じる瞬間はありますか。
金澤:例えば、花の拠点「はなふる」で、色とりどりの花々と真っ青な空が広がる景色を目にして、パッと表情が輝く瞬間があるんですよね。
北海道らしい空、空が高い、広い。こういう景色を求めていたんだなと感じますし、ツアーに参加していただいて良かったと感じる瞬間です。
ーーとても素敵なお仕事だと感じました。
移住者の気持ちに寄り添う支援
人口減少する自治体が多い中、堅調に増加している恵庭市。移住・定住促進は2011年からスタートし、当初はリタイア層向けの宅地販売が一つの入口でした。その後、2015年に国の地方創生政策が打ち出されると、恵庭市ではより本格的な移住施策を整備。現在はシティプロモーション課6名が意見を出し合いながら、移住希望者に寄り添った支援をおこなっています。
ーー移住・定住施策の具体的な取り組みを教えていただけますか。
吉田:「移住検討のステップに合わせた、途切れることない支援」をコンセプトにしています。
「恵庭にちょっと興味がある」情報収集段階の方には、移住情報をまとめたホームページやパンフレットをご用意。エリアごとの魅力をはじめ、病院や公園、北海道の気候などに関する情報を載せています。
吉田:「さらに詳しく知りたい」という方には、東京や大阪で開催される移住相談会で、生の声を直接お伝えしています。加えてオンラインや電話、メールでの相談も随時受け付けており、毎月数十件ほどお問合せをいただいています。
いよいよ「恵庭に決めよう」という段階では、オーダーメイドツアーをご案内しています。
ーー移住希望者との関わりのなかで、特に心がけていることはありますか。
金澤:おそらく移住希望者の方が一番最初に接する“恵庭の人”って、私たちなんですよね。最初の一歩として「恵庭ってあったかいな」と、良い印象を持ってもらえるよう心がけています。それぞれの興味の段階に応じたご案内も意識していますね。
資料を送って終わりではなくて、もう少し踏み込んでお話を聞いてみる。その方が求めていそうな情報を先回りしてお伝えする。マニュアル通りではなく一人一人に合わせた対応を大切にしています。
ーー丁寧に話を聞いてもらえること自体が、安心につながりそうです。
吉田:移住は人生の大きな転機ですから、良いところばかりを並べるのではなくて、雪の大変さや、車が必要になる可能性など、暮らしていくうえでのリアルなお話も、きちんとお伝えしています。
移住希望者の気持ちに寄り添った施策を行なってきた恵庭市。しかしながら、コロナ禍ではPRの機会が激減し、オーダーメイドツアーはマスク・換気必須の中で実施。移住希望者との関わりにも変化が起きたといいます。
金澤:2020年~2021年頃は移住フェアも開催できない状況でしたが、2022年頃から感染防止対策を講じながら徐々に再開され、私が配属された2023年には、以前の形に戻りつつありました。
ーー対面が難しい状況で、施策にも変化があったのでしょうか。
金澤:遠隔でも相談を受けられるよう、オンライン移住相談をスタートしました。ウェブ会議システムを使って、画面越しでお話を聞くスタイルができましたね。
移住を希望される層にも変化が見られました。
テレワークという働き方が確立され、住む場所は都市部に縛られなくてもいいと考える若い世代が増えてきました。移住希望者層の変化にともなって、大都市圏での相談会を強化し、“ライフスタイルに合わせた情報提供”を意識しています。
移住後も安心して暮らせるように
移住はゴールではなく新たなスタート。新しい土地で暮らし始めるとき、人が必要とするのは住まいだけではありません。地域のことを気軽に聞ける相手や、肩の力を抜いて話せるつながりもまた、暮らしを支える大切な土台です。
ーー移住後のサポートについても教えてください。
吉田:移住して終わりではなく、移住者同士の新たなネットワーク作りや暮らしの情報交換の場として移住者交流会を開催しています。
金澤:交流会は移住者が抱える不安や悩みの解消、コミュニティ作りという目的から2016年度に始まった取り組みです。参加者からは「SNS交換をした」「一緒に地域のイベントに参加した」など、新たな繋がりが生まれたとの声をいただいています。
ーー交流会はどのような場なのでしょうか?
金澤:当初は地域のカフェを利用した交流が主でしたが、最近ではパン作りや釜飯屋さんの豪華ケータリングなど、コミュニティケーションプラスαを目指して、市内のお店や事業者さんと連携した企画も増えてきました。
移住者交流会の場を提供し、自身も移住者であるトモエベーグル代表の角井さんにもお話をうかがいました。
ーー角井さんが移住されたのはいつ頃でしたか。転勤でいらして、恵庭が気に入ったとか。
角井:2004年頃に前職での転勤にともなって移住しました。
恵庭は以前暮らしていたカナダのバンクーバーに気候や自然環境が似ていて、非常に暮らしやすく心地よかったんです。実際に子育て環境も整っていますし、子どもものびのび育っています。
ーー特におすすめのポイントはありますか。
角井:移住後の暮らしを考えた時に、恵庭は利便性と自然環境のバランスが素晴らしい場所だと思いますね。大自然に囲まれた暮らしは魅力的ですが、現実問題として、病気や老後、子どもの学校との兼ね合いはありますから。
本州に実家がある身としては、帰省する際に空港が近いのもありがたいですね。また、起業支援も充実していて、トモエベーグル開業の際にはお世話になりました。
仲間を迎え、選ばれるまちへ
人口減少が続く時代に、「人の取り合い」をする移住施策には限りがあります。持続可能な移住支援のため、恵庭市が目指しているのは、このまちを好きになってくれる人を増やしていくことでした。
ーー今後、恵庭市としてどんな移住施策を目指していきたいですか。
吉田:恵庭市では「人が減っても住みやすい、選ばれ続けるまちを作る」という考えのもと、移住活動を展開しているところです。
プロモーション課の施策のポイントは3つあります。
1つは、等身大のリアルな姿を誠実に伝えること。2つ目は、関係人口やファンづくり。そして3つ目が、実際に住んでいる市民のみなさん自身が恵庭の魅力を発信していく、インナープロモーションです。
ーー市民の声そのものが、まちの魅力発信になっていくのですね。
吉田:実際に恵庭で暮らす方の満足度は高いですし、「このまち、住みやすいよ」という生の声こそ、一番のプロモーションになると思っています。市民主体で恵庭ファンが生まれていく、良い循環を作っていきたいですね。
吉田:私は2026年に配属されたばかりですが、移住された方から「こんなお花をお家に飾りました」「お散歩中にこんな発見がありました」という声を耳にすると、人同士の繋がりが続く、いい仕事だなと感じています。
恵庭市は「市民が参加して作り上げてきたまち」という歴史があります。移住支援は、市民主導のまちづくりの仲間と出会う第一歩。未来の恵庭をともに盛り上げてくれる仲間が増えていくとうれしいですね。
金澤:移住は、新しい場所であらたな人生をスタートする、人生の一大イベント。
そんな大きな決断のお手伝いをできることは、個人的にすごくやりがいのある仕事です。
移住希望者の方はきっと「幸せになるため」に移住を考えているのだと思っています。だからこそ、一人ひとりに寄り添った支援で、幸せな移住のお手伝いをこれからもしていきたいですね。
恵庭市の移住施策が目指すのは、ただ住んでもらうことではなく、その人がこのまちで幸せに暮らしていける道筋を、一緒に描いていくこと。きめ細かな支援の先にあるのは、暮らしの満足や、人と人とのつながりです。
恵庭市はこれからも、移住という人生の節目にあたたかな支援を届けていきます。
取材協力
〒061-1373 北海道恵庭市恵み野西2丁目2−12
道産小麦100%とホシノ天然酵母などこだわり素材で一つ一つ手作りするベーグル専門店
Information
恵庭市よりご案内
【ふるさと納税・選べる使い道】
恵庭市ふるさと納税では、寄付者の方々からお寄せいただいた寄附金を、以下の11の事業分野で大切に活用しております。寄附をお申込みの際には、ぜひご希望の事業をお選びください。
1.市長におまかせ(市が重点的に取り組む事業に活用させていただきます。)
2.水と緑と花のまちづくり事業
3.青少年・文化振興事業
4.高等学校等就学支援金事業
5.スポーツ振興事業
6.社会福祉推進事業
7.農業振興事業
8.子育て支援事業
9.学校法人 鶴岡学園 北海道文教大学への支援
10.学校法人 滋慶学園 北海道ハイテクノロジー専門学校への支援
11.学校法人 滋慶学園 北海道エコ・動物自然専門学校への支援

